「うり坊を実際に見たことがあるということでしたね」と町会長。

「3回あります。最初の2回は、3匹で西側の通路を歩いているところで、最後の1回は、先ほど話した肥田式で気合を入れたときです。小さなうり坊が、オートバイが走る位の速さで、北に向かって目の前を走り抜けていきました。小さいのに速いのが印象的でした。猫のように大きくジャンプするのではなく、足を小刻みに動かす特徴的な走り方でした。」

「うり坊は悪さをしないのでしょう」と町会長。

「そうなんですよ。しかし、1年もするとカエルやヘビまで食べるようになり、5キロぐらいのが数十キロになってしまいますから、我が家の庭には侵入できないという教育をしておくことが必要だと思っています。」

「なるほど。小さいときは入れた庭には、大きくなっても入って来て、掘り荒してしまうとお考えになったのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「それで、どのような対策をしたのですか」と町会長。

「父イノシシの心が折れて、母イノシシも来なくなり、うり坊だけ来たということが確認できたので、うり坊を教育するという観点から対策を立てました。対策を考えるうえで重要だと思われたのは、うり坊の方が鬱の症状が軽いということです。」

「母猪は、超音波害獣撃退器のある竹柵の間の通路を突破できなかったのに、うり坊は突破できたからですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。また、父イノシシの心が折れたのに、うり坊があきらめないのも、鬱の症状が軽いからです。観点を変えると、冬場のヘンイセイミミズしか食べられない時期というのは、うり坊が単独で、すばやく行動し、自分だけの行動範囲を広げて、独り立ちするための第一歩だということができます。」

「なるほど」と町会長。

「実際の対策としては、茶室と蔵の間の孟宗竹を2本増やし、3本にしました。また、孟宗竹の西側と茶室と蔵の間の庭にも忌避剤入りの茶碗を置きました。」

「1本の竹は乗り越えたので、3本だと乗り越えられるかどうかチェックしようとしたのですね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「孟宗竹の西側と東側の両方に忌避剤入りの湯飲み茶わんを置いたのは、孟宗竹の西側の通路まで来た場合と3本の孟宗竹を乗り越えた場合を考えたからですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。そして、蔵の北側にある物置と卓球場の間に7メートルほどの長さの孟宗竹を2本置き、竹の西側に忌避剤入りの湯飲み茶わんを2メートルおきに設置しました。」

「その孟宗竹には、どういう意味があるのですか」と町会長。

2020/1/19